澪工房 代表取締役社長 南勝重さん

有限会社澪工房の南代表と、おおいえのりこは、札幌スタイル認証製品を持つ同期です。何度も訪ねている白石区の澪工房にあらためて取材記者として伺いました。
経営者の先輩として、またモノを創る人であり、札幌スタイル機構理事の一人としてご一緒させていただき、そのしなやかな姿勢を大いに学ばせていただいているのが本音です。

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「澪工房設立の思い」
南さんは、47歳で澪工房を創りました。南さんがそれまで勤めていた会社が廃業したことが転機となり起業の道を選びました。私は、澪工房設立当初、南さんが描いていた会社像に現在は、近づいているのかどうか好奇心が湧き、南さんに伺ってみました。
「当時、家具製作の場を備えたショールームは無く、オープンキッチンのような製作工程に近いものを見せることをしたかったのです。一人のために一つのものをつくる。それを伝えたくて製作現場に近い状況をつくりました。既製品に近い価格帯で注文家具生産をする仕組みを作らないと会社が生き残れない」と強く感じたようです。対面販売の大切さは、今もぶれない大黒柱となりショールームに重厚感を添えているように思えました。

「木へのこだわり、そしてディープエコロジーに包まれて」
「主役は人間、家具は人間のための名脇役、いつも出すぎないことを意識しながら図面を引いています」と南さんは、謙虚におっしゃっていました。お料理を嗜まれる南さんの口から「家具と人間は、器と料理のその関係に似ています。」と伺った時は、とても納得しました。
「うちの家具創りは、工務店の建築に似ている。お客さまからお話を伺い、お客さまと創りあげていくこと、家具は、作品ではなく人間の道具です」と言い切られた南さんは、お客さまそれぞれに日々の物語を大切に描きながら、その生活に添えられる家具の図面を起しているように私には覗えました。そして暮らしの隙間を埋めるカウンセラーのようにも思えてきました。

「道具を創りたい、使われてなんぼです」と南さん。
私は、昔読んだノルウェーの哲学者アルネ・ネスが提言している『ディープ・エコロジー』のことをお話を伺いながら思い出していました。
人間も自然の一部だから森も山も自然は、人間と繋がっている。無垢材の家具も人間も木も自然そのものであり皆ひとつに繋がり包まれる。道産材を使うことも自然で無理のない循環がそこに存在しているみたいでディープエコロジーの記憶が私の感覚に甦ります。

「展望・奏でるものは、あたたかいシンフォニー」
「いつも追いかけられている感覚です」。60才になって、よりおもしろいと少年のような笑みを浮かべておっしゃっています。
「人は、面白いところ、明るいところに集まるものだから、いつもそこでありたい。
常に新しいことを仕掛けることをしている。振り返ってみると新しいことと古いことがスパイラル状になり変化し続けているのがわかる。正しいことも常に変化し、魅力あり続ける。飽きないことを考え常に追いかけられている感覚です」

南さんは、到達点を描き、そこから遡り短いスパンを埋めていく緻密な作業計画を愉しまれているその様は、私自身経営者として身近に学ばせていただいております。
「対面販売は、利益は薄いのですが、お客さまと創りあげていく感覚は、とても満ちたりています。」メーカー機能と小売機能の両面がないと残れないからと会社設立当初から開催している年3回の企画展も澪工房では念入りに準備をおこなっています。将来の展望を描きつつ、購買者層も30代、40代がメインになることを考えて社員も若返りを図り若い感覚のエッセンスを入れているそうです。

「満足を売る商売は、感じる力が必要です。私のメインの仕事はそれです」と自負されています。
日常的に繰返すお客さまの物語を埋める緻密な作業、そして南さんがちりばめた緻密なエッセンスの一滴一滴が集まり澪工房のスタッフ達と供に奏でる曲が澪工房のシンフォニーであり、あたたかいおもてなし料理であると想像してしまうのは、私だけでしょうか。

「こども時代、そして未来に纏う」
「協調性がなくて一言でいえば完璧に悪ガキです」と子供時代を振り返る南さんは、物を創ったことなど一切なく、不器用だったようです。
「でも人に伝えるための写実的な画は得意でしたよ」。
それは、現在の図面を起す作業に繋がっているのかもしれないと思いました。

そして未来に纏うことの問いに30代の頃から手掛けてみたかった風景写真と創作書道に興味があるそうです。「60歳になった今、自分の感受性がどう動くのか探究心が湧いています」。あくまでも前向きな姿勢に関心してしまいます。自己表現の世界に足を踏み入れること、そして客観的に自分を捉え自分を愉しむ術を知り尽しているみたいです。仙人への道のり、まだまだ南ワールドは続きますね。

「札幌に馳せる思い」
大らかな自然に囲まれて、しがらみのない土地柄そのすべてが自然体。
『札幌』、一番好きな環境、
『札幌』は、世界のオンリーワン。
『札幌』の佇まい、それは離れて暮らしたからこそわかる美しさ。

「札幌スタイル機構代表として」
南さんにとって札幌スタイル機構の代表を引き受けたことは、造作家具を始めたころの感覚に似ているようです。苦手なことを克服して、それが現在の仕事の軸となっているようです。
「人の前に立つことは苦手なことで自分の会社以外で今までそれをしたことはなかった。苦手なことを乗り越えた時に出会える新しい自分が見たいから引き受けたのかも知れない。人生は、すべて自分自身のイコールだから結果としてそれは成長に繋がる」と目を輝かせておっしゃっていたのが印象深いですね。

「好きな言葉・・・塞翁失馬(中国のことわざ)」
一時の損は、得に変わるかもしれないし、また、福と禍は、一定の条件の下で、互いに転化するかもしれないということになる。つまり、目先の利益ばかり見ていてはいけないし、利の為に手段を択ばないということをしては尚更いけないということである。

澪工房の家具は、シンプルでいて奥ゆかしさを感じさせます。私には静謐という言葉が似合う表情をしていると思えます。使い手の人間の脇でそっとゆるやかに時間を過ごすことに使命を感じる。私も札幌スタイル認証製品の「木のっ子」「筆箱」、オーダーベットを使わせていただいておりますが飽きのこないフォルムは、日々の生活にそっと寄り添う心地よさがあります。今回の取材は、洗練された家具の背景にある南さんの魅力にフォーカスさせていただきました。

皆さま、澪工房でぜひ暮らしの中にある優しい表情の家具に触れてみてはいかがでしょう。

(2012年4月・おおいえ のりこ/株式会社maaberry 代表・記)

 

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