チエモク株式会社 代表取締役社長 三島千枝さん

「おもちゃ箱」な工房
あなたは大丸藤井セントラルや東急ハンズで、かわいらしい木製の小さな黒板消しやカンナの携帯ストラップを見かけたことはないだろうか?小さいのによくみると質感が高く、それでいて木のぬくもりが感じられるものだ。それが、北区の新川にある工房の代表で木工職人の三島千枝さん率いるチエモク株式会社の商品なのだ。

このユーモラスで素朴な雰囲気の中にも職人の技術が光る商品は、例えば世のオジサン方が飲み屋のオネエさんへの話題づくりなどのために買っていく、などと意外なところにもファンがついている模様なのである。意外にもどちらかというと、モノの価値を見る目を養ってきた中年層に特に人気があるという。
その他にも道具シリーズ、楽器シリーズ、季節商品や限定品まで様々な種類の携帯ストラップがあり、見ているだけでも楽しい。このサイズ感と、どことなくひょうきんなデザインはおもちゃ箱のなかにあるおもちゃを見ているかのような気さえしてくる。

最近では新しく「Chiemoku.inc」のブランド名で新しいステーショナリーラインを立ち上げた。札幌スタイル認証製品のペーパーナイフをはじめ、クリップを魚に見立てて、箱から磁石のついた竿で釣りあげるクリップケースなど、一風変わった楽しいステーショナリーが生まれている。
ただ、どの製品にも共通しているのは、使い易く、耐久性があり、道産の木材の美しさや特性を生かしたものだということ。その上でデザイン的におしゃれであることを心がけて一つ一つ丁寧に製作しているという。

0になったつもりで再スタート
三島さんは、父親が家具職人だったことから木という素材を身近に育った。ただ、この道に入るまではこれといって職人になろうと決めていたわけではないという。当たり前のように木と塗料の匂いのする工房が併設する自宅で幼少期を過ごした。それまでは自分が職人になるなど思いもよらないことだったという。チエモクスタッフで中学時代からの幼なじみの樋口さん曰く、彼女は小学校時代からその親しみやすい人柄もありかなりな有名人だったという。非常に器用で頭もよかった。大学も北大に進学するほどの才女で、大手デパートのアパレル系の部署に配属になった。

転機が訪れたのは今から10年近く前。それまで北大、大手デパート勤務と順調に進んでいたかに見えたが、ブランドのみでモノが評価される風潮の強いアパレル業界に疑問をもつようになる。そして、そこを退職した後、この先の人生を真剣に考えるようになっていった。お世話になった上司に対して、「あとから10年もしたら、私辞めてよかったです、こんなこと出来るようになったんです」といえるようになろうと考えたそうだ。そして、「0になったつもりで」今後のことを模索した。

ものづくりをしようと決めてから、一番身近で「自分でも何か作れそうだった」木材加工を意識するようになる。図らずも父親に「弟子入り」することになる。しかし、当然そこは職人の世界。親子といえども簡単には弟子入りを認めてはくれなかったという。
それでも様々な木工の技術を少しずつ工場の片隅で木っ端を使いながら磨いていったと言う。そして、加工技術の練習にかんなを作ったのがはじめて自分の作品をつくった時だったそうだ。現在でも商品として名を連ねているかんなストラップはその系譜に位置するものである。売れ行きも上々で三島さんとしては特に思い入れのある商品なのだ。
販売に関しては、初めは友人や知り合いに見せる程度だったが、そのうち小樽の土産物屋さんに商品を委託販売するなど徐々にではあるが販路も広がりを見せていったと言う。そうして少しずつだが着実に売れ始めて行く。

「チエモク」誕生
2008年に父親の工場から独立する際に苦労したことの一つに会社の名前を決めるということがあったそうだ。チエモクという名前はどことなく音にユーモラスな響きがあるが、この屋号を決めるにあたってはあれこれと悩んだという。それについてはこんな顛末がある。
はじめは、これまでも使って来たブランド名「空沼工房」にしようかと考えたが、ひらがなや漢字、色々な組み合わせを試したもののどれも画数があまりよくないということで断念。調べていくうちに、画数の少ない名前は吉名が多いことに気づいた三島さんは、シンプルに自分の名前と「木工」の「木(もく)」を組み合わせた名前にしたという。
そうして名付けられた「チエモク」という名前。とても素直で覚えやすい。自身の名を使っているせいか、どことなく三島さんの人柄を象徴させるような雰囲気をもった名前だと感じる。

木を大切に、人を大切に
チエモクさんは木と人を大切にする会社である。それはすべて木の質感を活かして作られた製品からも感じとることが出来るのはもちろんだが、札幌スタイル認証製品である「えこはしくん」も木とそれを育てる環境を身近に感じ、大切にして欲しいという思いから出来たものなのだろう。「木工屋たるもの、森に恩返しをしたい」と三島さんは考えているのだ。
100%道産材を使い、利益の一部を還元する活動で、木材の産地下川町から毎年感謝状を頂いている。これは、これまでの職人のイメージとは異なる、自由な気質を感じさせると同時に木という生き物に対する感謝と愛着があればこそだ。

顧客に対しても非常に真摯な姿も印象的だ。例えば、合格祈願のスパイクタイヤストラップ。素材となる木の種類までも願掛けを意識して選ばれている。一位(イチイ)、栓(滑りまセン)などの素材に加え、実直なことに「合格祈願」というからにはと、ちゃんと神社でご祈祷までしているのだとか。

また、チエモクのあらゆる製品について、お客様が愛用していて壊れた時には、ちゃんと責任を持って修理してくれる(有料)。携帯ストラップ製品を中心に、ご愛用のお客様から年に数件の布の張り直しや金具のつけなおしなどの修理品が送られて来るという。「お客様に必要とされて、製品を長く使っていただく事が、木の命に報いる事でもあるので」と言う。

ホームページの商品説明にも「読ませる」文章が載っていて、思わず読んでしまう。ホームページには数々の顧客のコメントと、それに対する丁寧なリプライがついている。こうしたこと一つ一つに気を配れるのは、素直にお客さんを大事に思い、魅力を伝えていきたいと考えてのことだと感心させられる。ブログの更新もかなりの頻度で行われていて、時にはユーモラスにチエモクにまつわるあれこれを伝えている。
実は三島さんは、初期の頃から作ったものを友人に見せ、意見を聞くうちに今の商品展開になってきたという経緯がある。現在でも、スタッフの樋口さんの消費者目線の辛口アドバイスなどを取り入れながら、アイデアを形にしているのだという。今後も次々と生み出されるチエモクの製品に期待大である。

 

認証製品詳細
 chiemoku.inc ペーパーナイフ
空沼工房 えこはしくん手作りお箸キット

公式サイト
チエモク株式会社