デザイナー 佐藤裕子さん

佐藤裕子さん

佐藤裕子さん。スイス設計(株)※ 2007年現在、社名は株式会社佐藤デザイン室に変更。

毎年花見シーズンになると、新聞やテレビで花見会場の人込みが紹介される。
満開の桜。子供連れでのんびり弁当を広げる家族連れ。コンパを兼ねてジンギスカンを囲む大学生。夜桜に備え昼間から場所取りをする会社員。
しかしその様子を伝える写真や映像で、桜よりも人込みよりも目を引いてしまうのは「ブルーシート」である。デザイナーの佐藤裕子さんは季節の風物詩として毎年目にするこれらの写真を「お洒落じゃないなあ。第一、災害現場みたいだなあ」と、残念に感じていた。

思えば「ブルーシート」は目立たせる必要がある時のために、あえて自然界にはない「ブルー」を使っているのかもしれない。では、自然に馴染むレジャーシートを作るとしたら何色がいいのだろう。佐藤さんが代表を務める札幌イメージコーディネート研究会では、市内のデザイナーが参加して定期的に勉強会をしている。講師は、大学の同学部の大先輩であり、「札幌の景観色70色」の選定に関わった元札幌市立高等専門学校の宮内博実教授だった。仲間と話すうち、宮内教授が「札幌の70色」を作成するときに用いた「色を分析するソフト」を使い、エゾヤマザクラのある風景を分析してみようと思い付いた。円山公園、北海道神宮、資料館などへ出かけ写真を撮影、色を分析する。結果現れた色たちに、東京出身の佐藤さんは北海道らしさを見つけ驚いた。

札幌の花見の頃は、街中の緑が一斉に芽吹く。芝生も木も爽やかな新緑。そこに桜の薄いピンク。比べて東京の花見の頃、芝生はまだ枯れ芝状態。桜も、花と葉が同時に出てくるのではなく、花の後に葉が青々と茂り出す。だから東京の桜のある風景を分析すると、まったく違った配色になるのではないか。「さくらシート」の東京バージョンや熊本バージョンも作ると面白いと思った。そしてつくづく、札幌の春は優しい色で溢れているのだと実感した。分析した中から10色を選び、15センチ四方のモザイクにしてバランスよく配置した。デザイナーの腕の見せ所である。商品化するにあたり旭川の「山内ビニール加工」に制作を依頼した。2枚のポリエチレンでポリプロピレンの不織布を挟んだ3層構造。透ける感じがあり、和紙のような発色に成功。触ると米袋を厚くした感じで丈夫そうだ。

実はコストを下げるため海外へ発注してはという声もあったが、微妙な色めをしっかり伝えたいと地元での生産にこだわった。実際、工場へは何度も足を運び、試作から立ち会う事でイメージ通りの仕上がりになっている。

完成した「さくらシート」を持って公園に出かけた。芝生の上に広げるとよく似合う。土の上に広げてもよく似合う。落ち葉の上に広げるとさらにぴったり。景観に馴染む「さくらシート」は、春だけではなく落ち葉の頃まで大活躍してくれそうだ。一人のデザイナーのこだわりから、札幌の風景はさらに美しく変わるかもしれない。

(2006年6月29日)

※この記事は、2002年12月から2010年3月まで運営された「ウェブシティさっぽろ」内の「さっぽろの横顔」で紹介した記事を転載しています。

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テーブルクロスにもなります

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